国宝、重文、又国宝 2017年06月13日 美術 トラックバック:0コメント:12

西大寺展。

西大寺は、奈良時代に創建された「南都七大寺」の一つに数えられ、2015年に創建1250年を迎えた。
奈良時代、聖武天皇・光明皇后の後を継いだ称徳天皇が「鎮護国家」の思いを込めて開創し、
東大寺などと並び称される寺格を誇った。
鎌倉時代には稀代の高僧・叡尊(えいそん)が、密教の戒律を重視した教え(後の”真言律“)を広め、
その弟子の忍性(にんしょう)また江戸時代に大和生駒山・宝山寺を開いた湛海(たんかい)らの活躍などによって発展し、
数多くの仏教美術の名品をいまに伝えている。


と、展覧会の案内パンフレットに書かれていた。

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その「西大寺展」は日本橋三越の並び、三井タワーの三井記念美術館で開催されている。

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西大寺は真言密教の寺院だが、密教美術には独特のものがある。
まずは、「金剛杵」(こんごうしょ)「金剛鈴」(こんごうれい)といった修法具。そして多種多様の仏像、神像。

特にこの西大寺の造営に関わった僧・道鏡は、異様なほど多くの仏像を造らせた。
道鏡は女帝・孝謙天皇を誑し(たらし)こんだ怪僧として有名だが、
女帝の心の病を治癒せんがため、あらゆる諸仏・神に献身的な祈りを捧げたと言われている。

ただ今回、展示されるのは西大寺所蔵のものだけではなく、
元興寺、浄瑠璃寺、法華寺、岩船寺他一門寺院の名宝も一堂に会するという。
それらの修法具、仏・神像のうち国宝が11点、重要文化財は50点に及ぶそうで、
なんとも豪華な仏教美術展ではないか。

そのごく一部を紹介する。

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左は国宝の金剛宝塔。高さ約90cmの金銅製の塔で、木造建築の外観を忠実に模している。
内部には叡尊が所持していた舎利を納めていた。
右は文殊菩薩騎獅像。獅子に乗った文殊菩薩に4人の侍者が従う,いわゆる渡海文殊の作例。
細部まで彫技が冴えわたり、彩色もみごとである。

仏教美術といえば、やはり菩薩と童子が人気で、
今回も興正菩薩や普賢菩薩あるいは善財童子像には、幾重もの人垣が出来ていた。

これらの宝物はショーケースの中で陳列されているとはいえ、会場には一種独特の匂いが漂っていて、
いってみれば1200年の歴史が醸し出す匂いなのだろうか。
それは決して気の所為でなく、過去に訪れた古刹で嗅いだのと同じ種類のものだった。

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三越周辺も再開発が急ピッチに進められていて、この三井タワーを初めCOREDO室町1号から3号館。
あるいはYUITOといった多目的タワーが立ち並んでいる。
日本橋も室町も往時の面影はすっかり失われてしまった。

疲れるような高層ビルの谷間に居てもしょうがない。
場所を替えるとするか・・・

(続く)

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北斎通り 2017年05月03日 美術 トラックバック:0コメント:29

北斎美術館。

錦糸町東口から両国に向う道路を、北斎通りと呼んでいる。

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北斎通りを歩くこと20分ほどのところに北斎美術館が開館したのは、昨年の11月22日というから、
出来立ての美術館といっていいだろう。

その名の通り、江戸時代後期の浮世絵師・葛飾北斎を単独テーマとした、世界初の常設美術館である。
ちなみに北斎はこの近くの亀沢で生まれ、本所界隈(現在の墨田区の一角)で生涯を送っている。
北斎通りもこれから訪れる北斎美術館も、そういう背景の下に名づけられまた創設された。

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さて、北斎美術館である。来てみると予想外の先鋭的な建築で、一瞬たじろいでしまったが、
北斎その人も次々と新しい世界を切り開いていった先鋭的な作家だった。
あえて近未来的なデザインを提案した建築家の意図は、正しかったというべきかも知れない。

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同館では数々のコレクションとともに、
タッチパネル式装置などで、その画業をより深く楽しく学ぶことができる。

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更には北斎のアトリエを再現した、その蝋人形が評判になっている。
これは北斎84歳の頃、妹のお栄とともに住んでいた様子である。
門人の露木為一が描いた絵を参考に復元されたという。

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「ねえねえ、北斎さんの手、動いてない?」「見えないよ」「ちょっと待って・・・ほらほらっ」
「やだ、動いてる!」「ね、ね」「女のひとの手も動いてる、すごーい!」「ほんと、ほんと!」
たいへんな騒ぎになっている。

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帰路は両国から乗ることにする。
数分で江戸東京博物館、国技館を通り過ぎ両国駅に着いたのだが、
驚いたのは駅がすっかり様変わりしていたことだ。

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昭和4年からの駅舎、外観はそのままだが『江戸NOREN』という、非常に洒落た施設に生まれ変わっていた。

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江戸の町屋を思わせる空間に寿司、天麩羅、蕎麦、割烹などの和食店が並び、わくわくすることこと夥しい。

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二階から眺めるとなるほど、真ん中に大きな土俵を設えていやが上にも気分は両国、良き時代の両国。

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その二階にあるのが築地食堂「源ちゃん」。
現役時代はよく築地場内の食堂で昼飯を食べた私には、食いつきの良い店である。

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もちろん「源ちゃん」という店は築地場内には無かったが・・・

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食堂らしい多品種なお品書きの中から、写真的にも目についた「真鯛の胡麻だれ丼」を選んだ。
店員さんから、先ずは鯛にご飯をくるんで食べてくださいと言われた通りにする。
舌が貧しい私には、有難いことに何を食べても美味しく感じる。

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半分ほど鯛飯を味わったら、薬味を乗せてダシ茶をかけてお召し上がりくださいね。言うとおりにする。
有難いことに、貧しい舌には真鯛のダシ茶漬けが、極楽美味に思える。

それにしても東京の変貌は、日本橋、銀座といった中心部のみならず、
こうして下町にも及んでいること、さながら今浦島のように呆然とするばかりである。



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バベル 2017年04月25日 美術 トラックバック:0コメント:16

INSIDE BABEL

上野・東京都美術館で18日から、ブリューゲルの傑作「バベルの塔」が展示されます。
24年ぶりのことだそうで、他にもヨーロッパでは現在ブームとなっている、ヒエロニムス・ボスの作品を始め、
16世紀ネーデルランドの画家たちによる作品も90点近くやってくるという「バベル展」。
たいへんな混雑が予想されるようです。

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いちおう若いころにブリューゲル、ボスに影響を受けた私にとって、
なにがなんでも観ておきたい展覧会なのですが、タイミングによっては3時間、4時間待ちは当たり前といいますから、
脚に軽い血行障害を持つ身としては、まさに苦行のような時間です。

こういう場合の主催者側というのは、無慈悲なものですね。

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(2014年国立博物館における「キトラ展」の混雑)

炎天下で何時間立っていようが、観たいのだったら我慢しろよー。
そういう声が聞こえそうで、罵りたくなった記憶が何度かあります。

ところで、この会期中、都美術館ロビーでもうひとつのバベルが展示されます。
それが「INSIDE BABEL」という作品です。

大友

「INSIDE BABEL」とは、バベルの塔の中はどうなっているのだろうという疑問を持った、
漫画家で映画監督の大友克洋さんが、実際にオランダのベーニンゲン美術館を訪れ、
美術館の学芸員との意見交換などを経て研究と検証を重ねた50枚を超えるスケッチを元に、
デジタルコラージュの手法で作成したという興味深い作品です。

「BABEL」と「INSIDE BABEL」。
是非観たいものですが、悩むところです。


参考として過去ログ、「ボッシュとブリューゲル」また「ボッシュとその時代」をリンクしておきます。




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生誕90年 2017年03月19日 美術 トラックバック:0コメント:28

加山又造展。
加山又造は、革新的日本画家として戦後の画壇に新風を吹き込む一方で、
截金など古典技法の研究も深めるとともに、
多摩美術大学、東京藝術大学で教鞭をとるなど指導者としても大きな功績を残しています。

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その加山又造生誕90年を記念する展覧会が、日本橋高島屋で開催されました。
日本画、それも大家の展覧会に訪れることは滅多にない私ですが、
たまたま知人から鑑賞券を頂いたので、3月吉日、日本橋へ出かけたわけです。

日本橋は2年ほど前から再開発が進められ、
〔COREDO〕をはじめ新しい高層ビルが続々と誕生していて、
「お江戸日本橋」の面影がどんどん失われています。

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そんな光景にも関心があって、やってきた高島屋ですが矢張り目を瞠るような変わりようです。
高島屋が押しつぶされそうなほど、左右に高層ビルまた裏手にも・・・。

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しかし、百貨店建築として初の重要文化財となったという、この重厚な空間。
なんとも、いいものですね!

さて「加山又造展」です。

加山又造1

日本画を専攻しながらも、当時ヨーロッパのキュービズムに心酔した若き加山又造は、
動物、特に馬をモチーフとした実験的な作品を多数発表していますが、
これは全く知らなかったことですから、非常に興味深く鑑賞したものです。

加山又造2

そんな加山も、四十代から伝統的な様式美を追求するようになり、
名作「淡月」などの画境に至るのですが、

加山又造3

猫好きでもあったようですから猫の作品も多く、そのいずれもいきいきとした躍動感と生命感に溢れた傑作揃いです。
この「猫」という作品、会場ではいちばん人を集めていたようです。

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日本橋、もうひとつの目的は高島屋から、ひとつ離れた脇道にあるこのビルです。
〔ぶよう堂〕という地図専門の書店が、この地下にあります。

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あらゆる地図、それも畳二枚を超えるほどの大きなものも含めて、
地図に関心を持つ方たちには、またとない書店なのでしょう。

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本体は〔武揚堂〕という地図の制作と印刷の会社で、
目黒にある工場を見学させていただいたことがありますが、
地図を制作してゆく過程の息詰まるような緻密さに、こちらまで緊張したことを記憶しています。

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日本橋界隈は急激に変貌しているといいましたが、
裏通りにはまだ古い大正・昭和の光景が残っています。

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その中でも極めつけはここでしょう。あなご専門店『玉ゐ』。
この「ゐ」がまた粋ではありませんか。

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評判の店とあって表で待つお客が絶えません。

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やっと店内へ。ここの人気メニューだという穴子の「箱めし」を注文しました。
焼き穴子はふわふわの食感で、しかも濃厚な旨みが溢れ出てきます。
それでも鰻よりは脂が少ないので、しつこく感じないのですね。
たいへんけっこうでした!

ともあれ、高層ビルに挟まれながら、こういう古民家が生き続ける。
是非、そうあってほしいものです。



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禅の心 2017年01月15日 美術 トラックバック:0コメント:22

「仙厓」展。

出光美術館は丸の内の外れにある。
帝国劇場の9階が美術館のフロアといえば、判りやすいだろう。

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ここで「大仙厓展」という企画展が催されている。
仙厓義梵(せんがい ぎぼん)は江戸時代の禅僧、画家。禅味溢れる絵画で知られる。
39歳より博多聖福寺の住持を23年務め、引退後は多くの洒脱・飄逸な絵画(禅画)を残した。

笑いとユーモアを通して禅の教えを広めようとした仙厓の作品は、
禅に関心のない若い年代からも「ゆるい」「かわいい」と、人気が高まっているそうだ。

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仙厓の代表作はなんといっても「□△○」だろう。
大宇宙を凝縮させたものといわれるが、その解釈には諸説ある。
諸説あるということは、その真は解せないということに他ならない。

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「月を見上げる布袋さんと子供」

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「座禅して悟ったつもりの蛙」
このほか百数十点の禅画や書が展示されていて、
平日というのに多くの人が列を成し、妙に頷いたり首をひねっていた。

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出光美術館の他にない魅力といえば、ロビーからの眺望であろう。
眼下に皇居の緑地が広がり、特に晩秋の紅葉は見事である。
展覧会場を出た人々は、皇居に向いて並べられたソファに腰掛け、皇居の紅葉を飽かずに愛でていた。

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帰宅の総武線に乗るため、東京駅へ向かう。
はとバス乗り場の真向かいに、人気のブラッスリー&フレンチ「VIRON」がある。
最近、東京駅界隈でランチといえば、この「VIRON」に立ち寄ることが多い。

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この日はサーモンマリネとパン、それに白ワインで遅い昼ごはん。

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ここから東京駅はすぐなのだが、KITTE(旧中央郵便局)に寄り道をする。

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まっすぐ6階屋上へ。
東京駅の屋根が間近に見れる絶好の場所である。

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少し疲れた。
特急に乗って帰る。

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この仙厓展を訪れたのは、昨年11月8日のことでした。
その四五日前から風邪気味だったのですが、ぐずついたままの状態で美術館の人混みに、
しかもマスクも着用しないで出かけたわけですから、我ながら風邪を舐めていたものです。

報いはてきめんでした。
翌日から咳が激しくなり、次いで呼吸も切迫するに至って、
ついに緊急入院となったことは、12月13日の拙ブログでご承知かと思いますが、
ともあれ、たかが風邪なんて甘く見ていると、とんでもない目に遇うということを、
この齢になって初めて体に叩き込まれたのでした。

どうかみなさまも、気をつけてくださいますよう。


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