音楽の祭典(B) 2018年05月07日 酒場 トラックバック:0コメント:22

もうひとつの祭。

コンサートホールを出ると、外はうっすらと黄昏色に染まっていた。
とりあえず日比谷方向へ歩いてみよう。

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丸の内一帯の道路はご覧のように開放されて、多くの人たちが食べたり呑んだり歓談したり。

晴海通りを渡ると、なにやら物凄い人の群れが見える。
イヴェントでもあるのかと近づいてみると、今まで見なかった大きなビルが立っていた。
「東京ミッドタウン・日比谷」という35階建ての複合ビル。

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今年3月にオープンしたばかりのビルは、入場待ちの人が並ぶほどの賑わいで、
東京のめまぐるしい変貌には、ただただ呆気にとられるばかりだった。
後ろに見える尖塔は東京宝塚劇場のビルである。

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一方でJRの高架脇には、昔からの酒場風景がしっかり残っていて、

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ガード下の焼き鳥屋、はたまた路地の赤提灯にほっとする思いだった。

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とある路地の角に、楽しそうな酒場を見つけた。
先ずはここで一杯やろう。

貝料理が多いのも嬉しいではないか。
先ずはレモンハイと貝の昆布締め盛り合わせを注文する。
ところが、今日は人手が足りなくて時間がかかります、とのこと。

レモンハイは程なく運ばれてきたが、つまみの方はなかなか来ない。だんだんレモンハイが減ってくる。
このままでは、何も食べないうちにもう一杯注文することになりそうだ。
啜るように呑んでいるうち、やっと盛り合わせが出てきた。

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赤貝、鳥貝、ほっき貝などの昆布〆は、コリコリしてまことに美味である。
他にも目移りするメニューがたくさんあったが、また長時間待たされるのは敵わない。
せっかくだが場所を替えよう。

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これから新しい酒場を探すのも面倒なので、かつて訪れた新橋の店へ向う。
「酔心酒蔵」はその名のとおり、広島の酒「酔心」の直営店である。
酒も旨いが肴がけっこういけるので、新橋ではお気に入りの酒場だ。

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なんといっても〆鯖は外せないが、ここの「河豚皮ポン酢」は絶品である。
ところが今日に限って「河豚皮」はやってないと言う。
仕方がない、つぶ貝の刺身で我慢しよう。

酒は「酔心樽酒」の冷や。
やや甘いが樽の香りが馥郁とした美酒である。

ただ、先ほどの待たせる店といい、この「酔心」といい今宵の肴は消化不良。
それにやや疲れを覚えてきた。

こういう日は早く帰るべし、というところか・・・


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八重洲で飲む 2018年01月31日 酒場 トラックバック:0コメント:20

酒場漂流記(七の巻)。

月曜日夜のBS-TBSに「酒場放浪記」という番組がある。
俳人でもある吉田類氏が、東京を中心に各地の酒場を巡るという内容で、 酒呑みには垂涎の番組である。

かくいう私も現役時代は放浪三昧だった。
出張が多かったせいもあって、全国さまざまなところで居酒屋の暖簾をくぐっていた。
定年後は一変、夜の巷に出ることは滅多になくなり、ひたすら家呑みの爺さんになってしまった。
それでもなんだかんだと理由をつけては年に数回、ネオンを浴びに出かけているが、
往時に比べるとそう遠くもない酒場と酒場の間を、何ヶ月もかけて漂流しているようなものである。
その侘びしい漂流の軌跡をご覧になっていただきたい。

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今回は八重洲飲食街の漂流である。
ここは新橋と並んでサラリーマンのオアシスと言われている。
丸の内側の近代的な風景とは対照的な、昭和の匂いを濃厚に漂わせる一大飲食街。

露地露地には半世紀以上にわたって、
それこそ天文学的な人数の勤め人たちを酔わせてきた酒場が、未だに健在なのだった。
そういった露地の一本に今や伝説の酒場となった店がある。

八重洲D

昔はそんな有名になるとは思わず、同僚とハシゴの締めくくりにくぐった一軒である。
「ふくべ」という瓢箪の別称を屋号に持つ大衆酒場だ。
いつ行ってもびっしり満員で、無理やり詰めてもらったカウンター席(といってもベンチのような椅子だが)の、
肩と肩がくっつくような、そんな窮屈きわまりない場所で飲むわけだが、
肩触れ合うもなんとやら、飲むにつれてどちらからともなく言葉を交わすようになる。

「先輩はこの近くにお勤めで?」「いやだいぶ離れておりますが、あなたは?」
「大坂です~、最終の新幹線で帰るつもりですわ」「そりゃまた遠い!」てな具合で・・・

八重洲E

ご覧のように店内には至るところ全国の酒が並べられている。

八重洲F

寒い冬は「浦霞」「一ノ蔵」といった東北の酒を、夏はさっぱりとした西の酒「梅錦」「李白」などを選べるのが嬉しい。

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どうしても席が空かないときは、歩いて数分の地魚屋台「豊丸」を目指す。
名前のとおり新鮮な魚介が豊富に揃った居酒屋である。

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しかも桜鯛刺しが三百円、まぐろ赤身が四百円と非常にお安い。
お酒二本と魚介三品頼んでも、二千円前後で飲めるというわけだ。
(写真は中トロと平目の昆布〆)

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ちょっと飲み足りないかな、と思った時は昭和26年からやっているバー「BLICK」に立ち寄る。

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年代を経た床やテーブル、その木材の艶がまことに心地よい。

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さらに驚くのは「トリス」が置いてあることだ。
洋酒の洗礼を受けたそもそもが、このトリスだったわけで、
今になってみると熟成の足りない角のある液体は、ただただ酔うために飲んでいたような、
そんなチープな時代を代表するようなウィスキーだった。

しかし40年ぶりに飲むトリスも、まんざらではない。
シングルのストレートを二杯あけると、ヤクザな酔いが一気に襲ってきた。


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続・記念日 2017年11月07日 酒場 トラックバック:0コメント:22

あふたーこんさーと。

最近は週末や祝日を休業する酒場が、増えてきました。
週末が完全休日になった所為で、飲食街への客足が減り続けたからでしょう。
そうなると休日のコンサートで困るのが酒場探しです。

以前はお気に入りの居酒屋が年中暖簾を出していたものですが、休日は軒並み真っ暗な店先になってしまいました。
こうなると《食べログ》あたりの休日営業店を参考にしたいところですが、
他人の情報をあまり信用しない私は、頑固に勘と嗅覚で歩き回ることにしています。

今回は有楽町のコリドー街を探索するつもりで、数寄屋橋通りを歩いていたところ、
能楽堂ビルに気になる看板を見つけたのです。
四川料理「百菜百味」、エレベーター前の簡単なメニューには「前菜40種300円均一」と書いてあります。
!!入ってみるべえ。

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3階に上ると、なんとお洒落な店内ではありませんか。足が竦みそうです。
メニューも前菜40種の他に主菜が何十種類あるのか、わからないほどで目がくらくらします。
沈思黙考・・・先ずは高菜と枝豆の和え物、それと甕だし紹興酒を頂きましょう。

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高菜炒めと枝豆がどっさり盛られた皿がやってきました。
紹興酒にはまことに合うつまみで、我が家でも簡単に作れそうです。

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セロリと干し海老の炒め物、豚耳のラー油掛けもやってきました。
セロリはまあまあでしたが、この豚耳のこりこりした美味しさはたまりません。
しかし、前菜にしてこの量の多さはどうでしょう。
これだけで、お腹が膨れてしまったではありませんか。

ここは、どうやら「海鮮おこげ」が人気だそうで、後から入ってきたご婦人たちは、
「XXとおこげ」「おこげと~~、XX」口々におこげを連発しています。
その「おこげ」とやらを、こっそり見てますと沸々とたぎった湯気が実に美味そうなんです。
しかし、ここで満腹になっては次の酒が楽しめないわけで、おつまみ3品と紹興酒2杯でお勘定。

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コリドー街を探索しますが、どこも若向きの明るいお店ばかりで、

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とうとう新橋まで足を伸ばしてしまったのですが、やはりこの猥雑にさはほっとします。
よほど育ちが悪かったのでしょうな。

新橋飲み屋街は何本もの路地があって、居酒屋を物色するのも一苦労なんです。
鳥、豚バラなどを焼く煙で曇るような一帯ですから、
刺身なんぞで飲みたい私はその煙の中、海鮮居酒屋を求めてさまよい歩くのです。

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人通りの少ない路地で、やっとこれは?と思う店を見つけました。
「野崎酒店」。
名前からしてそそられるではないですか。
中を覗いてみます・・・、これはもうもう、突撃するっきゃないです!

地酒100銘柄を揃えているそうです。たまらんです。
選ぶのに時間がかかります。
・・・・・・・・・・・

やっと「李白」という酒を見つけました。
酒の味もわからなかった若い頃、いろんな銘柄を手当たり次第に呑んでいた中で、この「李白」がありました。
飲み心地よりその中国的な名前が印象に残る酒でしたが、
数年前、出雲を旅したとき松江で出されたのがこの「李白」だったのです。
「李白」はこの松江で醸造されていたのですね。

前置きが長くなりましたが、「李白」のお伴は何をおいても〆鯖!!
このところ美味しい〆鯖に遭遇しないので、飢えていたのです。
野崎酒店のは、その日に〆た自家製の〆鯖。

そしてもう一皿に自家製の鯨ベーコンを選びました。
この自家製ベーコンが目を剥くような逸品で、たぶん鯨の刺身を、
ちょっと前に燻したばかりではないかと思うほど、レアな舌触りだったのです。

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枡に溢れるほどの「李白」を吸いながら、〆鯖をほおばり鯨を噛む至福!
。。。。。。。。

ということで、楽しい一日を過ごしてまいりました。
みなさま、ありがとうございました。


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銀座路地裏 2017年08月28日 酒場 トラックバック:0コメント:20

酒場漂流記(六の巻)。

月曜日夜のBS-TBSに「酒場放浪記」という番組がある。
俳人でもある吉田類氏が、東京を中心に各地の酒場を巡るという内容で、
酒呑みには垂涎ものの番組である。

かくいう私も現役時代は放浪三昧だった。
出張が多かったせいもあって、全国さまざまなところで居酒屋の暖簾をくぐってもいた。

定年後は一変、夜の巷に出ることは滅多になくなり、ひたすら家呑みの爺さんになってしまった。
それでもなんだかんだと理由をつけては年に数回、ネオンを浴びに出かけているが、
往時に比べるとそう遠くもない酒場と酒場の間を、何ヶ月もかけて漂流しているようなものである。

その侘びしい漂流の軌跡をご覧になっていただきたい。
今回は地酒の一銘柄だけで酔わせる店を紹介しよう。

ところで、銀座には無数の露地や抜け道が網の目のように張り巡らされていること、ご存知だろうか。
華やかな表の顔からは想像できないような銀座の迷宮は奥深い。
銀座裏通りについては銀座・露地曼荼羅で、その一部を紹介したことがある。

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銀座通りから一本入った金春通り。
その八丁目、ちょうど博品館劇場の真裏あたりにこれまた露地があり、
その奥に居酒屋の灯りが見える。

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居酒屋「樽平」は山形の銘酒《樽平》が呑める店として人気がある。

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この居酒屋「樽平」、数寄屋橋交差点の不二家裏通りでも営んでいたのが、
何年か前に閉店したものだから、《樽平》を飲みたい時はこの八丁目の店を訪れるようになったのである。

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樽平酒造は山形県東置賜郡川西町にある。
この「樽平」、醸造した酒を一定期間吉野杉の樽に詰めるので、
木の香りが芳しい山吹色のやや酸味がかった酒になる。
ご覧の通り一見お茶のようなこの酒、一口含むと鼻腔にまた口中に木の芳香が広がる。

肴は「フグ皮ポン酢」と新鮮な「〆鯖」。
このあと「山形牛の芋煮」、とんぶりと大和芋の千切りを和えた「つららとんぶり」を追加する。
いずれも言うことなし!
豊潤な酔いが身体をじわじわと浸してゆく。


こちらは東銀座になるが、やはり裏通りに忽然という形容がぴったりな古民家が佇んでいる。

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初和初期の民家の内装をいじって居酒屋にした「秩父錦」。

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日暮れになると、飲兵衛泣かせの灯りが点る。

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この居酒屋は名前のとおり、埼玉県秩父の地酒「秩父錦」の直営店だ。
その酒はやや辛口で非常に喉越しが良い。

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鯵の叩きと牛モツの煮込みでちびちびやっていると、早くも忘年会の話が飛び交っている。


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地元ではしご 2017年06月24日 酒場 トラックバック:0コメント:22

酒場漂流記(五の巻)。

月曜日夜のBS-TBSに「酒場放浪記」という番組がある。
俳人でもある吉田類氏が、東京を中心に各地の酒場を巡るという内容で、
酒呑みには垂涎ものの番組である。

かくいう私も現役時代は放浪三昧だった。
出張が多かったせいもあって、全国さまざまなところで居酒屋の暖簾をくぐってもいた。

定年後は一変、夜の巷に出ることは滅多になくなり、ひたすら家呑みの爺さんになってしまった。
それでもなんだかんだと理由をつけては年に数回、ネオンを浴びに出かけているが、
往時に比べるとそう遠くもない酒場と酒場の間を、何ヶ月もかけて漂流しているようなものである。

その侘びしい漂流の軌跡をご覧になっていただきたい。
久々の第五回は地元飲みの話である。

ところで、私は地元で一人で飲むということは殆んどない。
ただし、ここに支社がある某社の人々とはよく飲んだ。

支社との会議は大概夕方が多かったせいもあるし、
また私も支社の連中も故意に夕方の会議を予定表に入れるようにしていたのである。
いわばそのまま酒場になだれ込みたいがための確信犯的な会議だったといっていい。

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そのうちの一軒が家庭料理の「福酔」。
酒はもちろんだが、料理が美味しくて非常に落ち着ける店である。
だがやはり定年後は足を運ぶことが少なくなり、年に二三回という有り難くない客になってしまった。

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ここの女将は俳人でもあり、お客は俳句愛好家も多い。
二階にある店の窓には、女将がその月に詠んだ俳句が飾ってあり、
昼間その前を通る際は必ず見上げて「やってますねー」と独語するのが常である。

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久しぶりに訪れたのは秋も深まった10月の半ば。
カウンターの上には大皿に季節の惣菜が盛られて並べられている。
これでもうお腹がぐうと鳴ってしまう。

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先ずは酒と突き出しが出て、ちびちびやりながら大皿を物色するのである。
熟考の末、でもないが椎茸をいただく。ふっくらと煮えた椎茸の得もいえぬ香りと食感、そしてお味。
蒟蒻の煮しめもいただこうではないか。

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必ず注文する豚バラ肉の串焼。
酒は房総の地酒「梅一輪」である。

ここで小一時間飲んだ後、地元では珍しくはしごする。
というのも気になる店があるからだ。

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「福酔」のすぐ裏手にある「金角」もお付き合いが長い。
ここのマスターが胃がんの手術をしたという。
なかなか機会が無いので、お見舞いがてら立ち寄ってみようと思ったのだ。

思ったより元気なマスターの顔を見てほっとする。
マスターはというと大げさなほど喜んでくれて、
通常のつまみの他に、今は珍しい青柳の刺身を出してくれた。

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「こんないい青柳は、滅多に口にできないよ」
その言葉どおり、磯の香りがたっぷりの青柳を含むと目が宙に浮いてしまった。

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顔写真OKなのは、マスターがオールデイズのボーカリストでもあり、
毎土曜日の深夜、あるライブの店に出演しているからだそうだ。
胃を半分失ったマスターに、それでも「無理しないで」とはなんとなく言えない。

一度は聴きに行かなければと思うのだが、土曜の深夜に出歩く齢でもないので、
「そのうち、必ず」なんて曖昧な口約束をしている。


何年ぶりかの地元はしごは、昨年10月14日のことだった。
それからちょうど一ヵ月後、私は肺炎で入院する羽目になったのだが、
飲み納めの予感がしたのかも知れない。




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