もしかしたら 2016年08月22日 演奏会 トラックバック:0コメント:16

希少な宝物?

会社勤めをして初めてのボーナスを、ある演奏会に費やしたことがある。
当時は、最後の巨匠と呼ばれていたドイツのピアニスト、ウィルヘルム・ケンプ(1895-1991)のリサイタルであった。

今世紀の最も偉大なドイツのピアニストに挙げられるのが、 シュナーベル、バックハウス、ケンプの三人だが。
厳格で重厚なシュナーベル、バックハウスに対して、 ケンプは抒情的な演奏で一時代を築いた。

クラシックの初心者、その多くが陥るように私もドイツ音楽に傾倒していたが、
特にベートーヴェンの作品は「これ以外にクラシックと呼べるか」とばかり、浴びるように聴いていた時代があった。
もちろん、三大ピアニストによるベートーヴェンのソナタも、LPが擦り切れるほど愛聴していたものだ。

そんな時代のケンプ来日だったから、後先も見ずチケットを購入したのだった。
1965年のことである。
ケンプ
ILLUSTRATED BY NANTEI

東京文化会館でのプログラムは
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モーツアルト:ソナタ第3番(K281)
ショパン:四つの即興曲
ブラームス:ソナタ第3番(作品5)
ベートーヴェン:ソナタ第31番(作品110)

なにせ半世紀前のことである。
演奏の様子を覚えている筈はないが、最後の大好きな「ピアノソナタ・31番」。
第3楽章《嘆きの歌》の途中から、 涙が止まらなくなってしまったことは鮮明に記憶している。

そしてアンコール曲が終わるやいなや、無我夢中で楽屋口に駆け込んでいた。
「サイン プリーズ!」とか叫んでいたのだと思う。
大勢の関係者に引きずり出されそうになった時、 人々を制してケンプが大きな姿を現したのだった。
私の振りかざすプログラム・パンフレットを笑いながら受け取ると、 太いペンでサインしてくれたのである。

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※その頃の演奏会パンフレットは、著名なグラフィックデザイナーが手掛けたものも多く、
パンフレットそのものが作品として、グラフィック年鑑に紹介されてもいた。


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その表紙を開いた1ページ目の顔写真に、さらさらと書かれたサイン。

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随分経った後年、気になっていろいろ調べてみたが、日本で演奏後のサイン会を開いたという記録はなく、
また、直筆のサインを所有しているという方の情報も得ることは出来なかったから、多分、希少なものだと信じている。

いずれにしろ当時の私は怖いもの知らず、恥知らずの若さであった。
しかしその無謀さが、こうして奇跡的なサインを手にすることが出来たのも確かである。

せっかくだから、最後にケンプの演奏を紹介しよう。
ベートーヴェンではなく、バッハのピアノ協奏曲より《ラルゴ》。
心が洗われるような演奏とは、こういうことだろう。




その後、演奏家のサインは3度貰っているが、
我ながらミーハーだったのは、これである。


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五月五日 2016年05月07日 演奏会 トラックバック:0コメント:22


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今年も皐月晴れの好天。気温は27度という半袖が心地よい日だった。
ここは有楽町の東京フォーラム。この混雑は黄金週間恒例となったクラシックの祭典で、今年12回目を迎える。
ラ・フォルネ

ラ・フォル・ジュルネ音楽祭は、1995年にフランスのナントで誕生した音楽祭である。
「ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)」と題された音楽祭は、
その後リスボン、スペインのビルバオ、リオデジャネイロ、ワルシャワへと広がった。

東京では2005年「ラ・フォル・ジュルネ・ジャポン」として初めて開催されたが、
来場者数32万人という、クラシックの音楽祭としては驚異的な動員を記録し、
この11年間でのべ750万人もの来場者を集めるという一大イヴェントとなった。

12年目の今年は《ナチュール=自然と音楽》をテーマに、5月3、4、5の3日間、
8つの会場で計150近くのコンサートが催される。
有料コンサートは、いずれも1500円から3000円。

泊まりがけで三日間楽しむ方も多いと聞いた。
ともあれ、音楽ファンにとっては熱い三日間である。

私は毎年そのうち一日の2公演を楽しんでいるが、今年はまずこのプログラムから。

プログラム

オペラ作曲家としてのみ知られているようなプッチーニの、これは珍しい弦楽曲である。
CDはもちろん、こうして生演奏で聴けるなんて滅多にあることではない。
一楽章の短い曲だが流石プッチーニらしい旋律美に溢れた作品だった。

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「浄められた夜」は伝統的な音階や調性を破壊した現代音楽家シェーンベルクが、
それまでのロマン派的な手法で書いた最後の作品と言われている。
ワーグナーの影響を受けた時代の非常に官能的な音楽である。

シェーンベルクと「浄夜」については、こちらを参考にして頂きたい。
http://nantei1943.blog129.fc2.com/blog-entry-592.html

さて次の公演までは相当時間を残しているが、このラ・フォル・ジュルネは有料の他に、
丸の内一帯で無料の公演を楽しめるようになっている。

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メイン会場のフォーラム広場や地下ホール、また他のビル・コンコースでも、
様々なソリストや団体のパフォーマンスが目白押しだから、それらを巡るのも醍醐味だろう。
ただし、歩き過ぎて脚をさする方もちらほら見るようだが。

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これは三菱一号館の庭園である。新緑の中で聴く音楽はことのほか心地良い。

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この一号館には今や時間待ち覚悟の人気レストラン「Cafe1894」がある。
旧三菱銀行の姿そのままの、重厚な空間が評判になっているそうだ。
時間はたっぷりあるので、後学のためにとも思ったが、

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私はやはりこちらの方に惹かれる。

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フォーラムの広場に並ぶ屋台の一品とアルコールを口に運びながら、
同じ喜びを共有する老若男女の姿を眺めるのが、幸せでたまらないのである。

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この日はローストチキンとローストビーフ、そしてワイン。
明るい時間のアルコールに、ふんわりと酔いが回ってくる。

次は非常に楽しみなプログラムである。ロシアのピアニストボリス・ベレゾフスキー。
1990年のチャイコフスキー・コンクール優勝者で超絶技巧の持ち主だが、
なにより2メートル近い身長と、がっしりした体格は往年のラザール・ベルマンを思い起させる。
映像で見たベレゾフスキーが弾くピアノは、まるでオモチャに見えたものだ。

演奏曲目は開演まで秘密だというから、いやが上にも期待が高まるではないか。

と・こ・ろ・が!
ホール・B7の前には、『ベレゾフスキーは急病のため来日を取り止めました』という貼り紙が。
代わりに別のピアニストが急遽推薦されたと書かれていた。
それがこの新しいプログラムだった。

プログラムB

レミ・ジュニエは2013年のエリザベート国際コンクールで、20歳にして2位になった最も期待されるピアニストらしい。
未知の才能に触れることができるのも、この音楽祭の醍醐味である。
ベートーベン、ショパン・・・特に印象深いものではなかったが、
バルトークの生き生きとした演奏には彼の持ち味を見た思いがした。

それにしても繰りごとになるが、ベレゾフスキーのリストを聴きたかったものである。
残念!

さて、このあとは何年かお付き合い頂いている方々にとって、
「やはりね~」という行動なのは言うまでもない。

ナンテイ流『夜のラ・フォル(熱狂)』が始まるのである。

(過去5回については、カテゴリ『演奏会』をご覧ください)

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音楽の祭典(B) 2015年05月06日 演奏会 トラックバック:0コメント:24

二つ目のプログラム。

これは是非聴きたかった、鈴木雅明、鈴木優人という屈指のチェンバロ奏者によるバッハ。
姓が示す通り親子でもある彼らの競演は、大いに興味を引かれる。

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しかも鈴木雅明が設立し、音楽監督も務めるこれも世界的に評価のあるバロック合奏団、
バッハ・コレギウム・ジャパンとの共演とあってはなおさらだ。

鈴木
(写真:借用)

曲目は、
バッハ:フーガの技法より「コントゥラプンクトゥス」 
バッハ:2台のチェンバロのための協奏曲第2番


期待以上だったのは、チェンバロのスリリングな演奏だった。
バッハはご存じのように、一つのモチーフを様々に修飾しながらバロック建築のように積み上げ、
壮大な一大伽藍を築き上げてゆく『フーガ』という技法によって、
以降の音楽に絶大な影響を与えたことで《音楽の父》と呼ばれている。

そんなバッハの作品が今も色褪せることなく、驚異的な演奏回数を誇っているのは、
巨大な音楽世界もさることながら、そのリズム感によるところも多いのではないだろうか。
お聴きになると判るだろうけど、一拍目を強調したりシンコペーションの連続する音楽は、
非常に躍動的でジャズやロックにも通じるものがある。

バッハがジャズやロックにアレンジされる由縁だろう。
ちなみにアメリカの偉大なオルガン奏者、パワー・ビックスがニューヨークのセントラルパークでバッハを演奏すると、
クラシック愛好者はもちろん、ジャズやロックファンまで盛り上がったという。

余談はともあれ、この鈴木親子のチェンバロはそのことを彷彿とさせてくれた演奏だったのである。
だからといって、軽いジャジーな演奏かというと決してそうではなく、
フーガで積み上げてゆく緊張感に充ちた音楽に、《バッハの普遍性》を再認識させられた思いだった。

もう一つの祭典。
私にとってラ・フォル・ジュルネは、もう一つの愉しみがセットになっている。
どちらが本来の目的か判らないような、アフターの愉しみ。
それがために、最後のコンサート終了を夕刻に定めているような按配である。

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長くお付き合いいただいている読者諸氏は、そんな私の本性を早くから看破っているに違いないが・・・。
顰蹙を覚悟で、今回もネオンが灯り始めた巷へと繰り出そう。

有楽町から新橋に向かってJRと首都高速が並行している。
その高速の下が商店街になっていて、GINZA5と名付けられている。
その地下街にエスニックな一画がある。

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インド、タイ、ベトナムといった東南アジアの屋台料理店が並んでいて、
一瞬不思議な街に紛れ込んだような心地になる。迷わずベトナム屋台に腰を下ろす。

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ベトナム料理の定番ともいえる『生春巻き』。
『豚肉のレモングラス巻き』というのも味わってみる。酒は赤米で作った焼酎『ネプ・カム』。
爽やかな甘味のある酒だ。

ところで、何故迷わずベトナム料理かというと、再開発前の有楽町には『可口飯店』というアジアン・レストランがあり、
そのアジアンレトロな雰囲気を持つ建物と、本格的な東南アジア料理の数々で行列の出来る人気店だった。

可口飯店
(写真:借用)

私も仕事仲間と打ち上げに使ったり、一人でランチを食べにきたりしていたものだ。
平成17年、周辺の再開発でこのビルは壊されてしまったが、なんと無粋なことだろうと残念に思ったものである。

そんな思い出がよぎったものだから、GINZA5の地下へ誘われるように入ってしまったのである。
あともう一品注文したかったが、次がある。
このへんで切り上げて、銀座最古といわれる大衆酒場『三州屋』に向かう。

その『三州屋』、なんと休業日というではないか。
やむを得ない、ならば行きつけの八重洲『ふくべ』に足を伸ばしたがここもお休みだ。
そういえば周りの居酒屋は軒並み灯りを消している。

悔しいがこのまま帰るか、と思って見慣れない路地を覗いたところ、《地魚屋台》という提灯が目に飛び込んできた。
しかも「鮪祭り」という看板がおいでおいでと呼んでいる。
歩き疲れたのと刺し身食いたいの一心で、その『豊丸』の階段を登る。

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酒を頼むと鮪赤味の突き出しが出て来た。まったりとして美味い。
これは期待できるぞ。さっそく中トロとひらめの昆布〆を注文する。

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いずれも予想にたがわぬ上物。やはり酒のお伴はこうでなくては!

勢いがついたわが足は、最後の仕上げに向かう。
何十年ぶりだろう、このバ―に寄るのは。昭和26年からやっているバーらしいバー『BLICK』。
嬉しいことにまだ店を開けている。

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そして、もっと嬉しいことにはメニューから《トリス》が消えていなかったことだ。
そのトリスのショートを2杯、ゆくりと呑み干す。

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年代を経た店内の雰囲気を肴に・・・
洋酒といわれるものを初めて口にしたのは、このトリスウィスキーだったな。なんて思いながら。
スコッチは無論のこと高級ウィスキーの味を殆んど知らない私。
その貧しい舌に、トリスは今宵も充分な幸せを齎してくれた。

BLICKから東京駅八重洲口は近い。
八重洲口はご覧のように、大きなウィングが覆いかぶさってすっかり様変わりしてしまった。

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楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
それにしても怒濤のような一日だったな・・・

さて、明日からはまた百姓だ。


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音楽の祭典(A) 2015年05月05日 演奏会 トラックバック:0コメント:10

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東京駅から、

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国際フォーラムへ。

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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2015。
ラ・フォル・ジュルネ音楽祭は、1995年にフランスのナントで誕生した音楽祭である。
「ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)」と題された音楽祭は、
その後リスボン、スペインのビルバオ、リオデジャネイロ、ワルシャワへと広がった。

東京では2005年「ラ・フォル・ジュルネ・ジャポン」として初めて開催されたが、
来場者数32万人という、クラシックの音楽祭としては驚異的な動員を記録し、
この10年間でのべ700万人もの来場者を集めるという一大イヴェントとなった。

11回目を迎える今年は《PASSION(パシオン)》をテーマに、5月2、3、4の3日間、
7つの会場で計140近くのコンサートが催される。
有料コンサートは、いずれも1500円から3000円。

泊まりがけで何公演か楽しむ方も多いと聞いた。
ともあれ、音楽ファンにとっては熱い三日間である。

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私は毎年、2公演を楽しむことにしている。
今年のプログラム、まずは初めて聴く音楽を選んだ。
ドビュッシー:6つの古代のエピグラフ
リスト:十字架への道

いずれもデジュー・ラーンキ、エディト・クルコンによるピアノ連弾である。
実はこの二人、夫婦デュオなのだがその阿吽の呼吸は、夫婦といえ驚異的な演奏と評価されている。

一曲目の《6つの古代のエピグラフ》は、ギリシャに憧れたドビュッシー晩年の作品である。
オリエント的な美しい旋律が出てくるかと思うと、現代音楽に通じる無調性を多用した斬新な響きに溢れている。

二曲目《十字架への道》、リスト最晩年に作曲された宗教的作品。
若い頃からその超絶的な演奏技術で、社交界の寵児として持て囃されたリスト。
その作品は技巧的華やかさを誇示するものが多かったのは当然であろう。

だが次第に宗教的な色合いの音楽が増えてくる。
50歳で聖職者となってからは《巡礼の年》や《詩的で宗教的な調べ》といった作品はもちろん、
ミサ曲、レクイエムなど典礼のための作品も多数残している。

この《十字架への道》はキリストが十字架を背負い、ゴルゴダの丘を歩きそして亡くなるまでを描いている。
グレゴリア聖歌の旋法をモチーフに用いた40分に及ぶ大曲である。
恥ずかしながら私には、非常に晦渋な音楽だった。
が、こういう機会でもなければ、体験できない音楽であろう。
ラ・フォルネというのは、そういう意味でもワクワクさせてくれる祭典なのだ。

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次のプログラムまではまだ時間がたっぷりある。
まずは、空腹を満たすためフォーラムの広場に並ぶ屋台を物色する。

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中でいちばん客の列が長い屋台に注目。

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岩手地鳥のローストが実に旨そうだったので、ワインとともに頂く。なかなかいける!
ただ、調子に乗ってワインを追加すると、次のコンサートで鼾をかく惧れあり。

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有料以外でも無料のコンサートがあちこちで催されている。

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それらの会場をつまみ食いのように渡り歩くのも、このお祭りの愉しみのひとつだ。
もっとも、メイン会場の東京フォーラムだけでなく、大手町一帯のビルや広場も会場になっているから、
健脚でなければとうてい踏破できるものではないが。


(続く・・・)



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南回廊 2014年11月17日 演奏会 トラックバック:0コメント:34

記念日。
(2014)

11月は私の誕生月なのだが、もう十年余り周りから忘れ去られている。
この齢ではどうでもいいといえば、どうでもいいのだが少々癪でもあるので、
数年前から自分で自分を祝うようにしてきた。

なかなか行けないコンサートに招待し、招待されようという企画である。
今年もその招待を快く受けて、素晴らしいひとときを過してきたのであった。

さて、今回のプログラムは。

シベリウス:交響詩《大洋の女神》

マーラー:交響曲第7番《夜の歌》

指揮:ピエタリ・インキネン

日本フィルハーモニー交響楽団



インキネンは1980年生まれのフィンランド出身。
国際舞台で活躍し、最も注目を集める指揮者の一人だ。
2009年から日本フィルハーモニー交響楽団の主席指揮者も勤めている。

フィンランド出身の指揮者だから、シベリウスはお手のものというのは短絡的だが、
この《大洋の女神》は初めて聴く交響詩で、興趣の沸く一曲なのもさりながら、
何よりも未だ34歳の新鋭が振るマーラーの、それも第七番は必聴のプログラムではないか。
そこで誕生日を大きくずらして申し込んだのが、この日のコンサートだった。

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コンサート会場は六本木アークヒルズにあるサントリーホール。
世界最大級のパイプオルガンを持つ、東京で初めての「コンサート専用」ホールである。

さて「出撃」の前に程よく空き腹を満たしておかなければならない。
なにせマーラーの第七番は一時間半近くの大曲である。

満腹すぎて途中で眠ってしまってはいけないし、
空腹のあまり静かな楽章で腹が鳴るようなことは論外である。

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でホールの前、「カラヤン広場」に並ぶおしゃれな店の中から選んだのが、
「スープストック」というこのところよく見かけるようになったスープ屋さん。
スープとフォッカッチャ、あるいは雑穀米とで食べる、まさに小腹を満たすにぴったりの軽食だ。

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何種類もあるスープの中から、「オマール海老のトマトスープ」を選び、
ちぎったパンを浸しながら食べる。
これで安心してマーラーに臨むことができる。

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一曲目はシベリウス《大洋の女神》。
ギリシャ神話の海神オケアノスの娘たちを題材にした交響詩で、
うねりを繰り返す大洋で、女神たちがさざめき合う様子が色彩豊かな音で描写されている。

さて、いよいよマーラーの七番。

マーラーといえば交響曲第五番の第4楽章アダージェットは、
ルキノ・ヴィスコンティ監督による1971年の映画『ベニスに死す』で使われて、
一躍マーラーブームの火付け役となったことはご存知だろう。

マーラーの音楽は晦渋で厭世観に充ちている作品が多い。
中でも最後の未完の交響曲九番は、聴いていると生きているのが厭になるほどの絶望的な音楽で、
名盤といわれるバーンスタインの演奏を持っているものの、滅多に聴かないようにしている。

ただこの七番《夜の歌》はわりと明るい作品で、
終楽章などはむしろ開放的で賑やかなものだから、かえって聴く者を惑わせるようだ。
しかしマーラーの特徴ともいえる不安定な旋律や、突如の咆哮は相も変わらず随所に現れ、
ためにミステリアスな作品ともいわれている。

この日の演奏を解説するのは、初心者に近い私には到底無理だし、
なまじパンフレットの一文を拝借したとしても、読むほうも面倒だろう。

なので一言、インキネンと日フィルの演奏は実にスリリングで、
強烈な印象を与える名演だったと記して誤魔化すとしよう。

もうひとつ、マーラーにはこういう聴き方もある。
マーラーの管弦楽には通常の編成の他に、さまざまな楽器が用いられている。

グロッケンシュピール、カウベル、スレイベル、マンドリン、ウッドクッパー(音を出す木製の玩具)、
鐘、銅鑼、ハンマー、そして鞭といったものまで使われて、
マーラー特有の奥深くまた不気味な世界を作り上げているのである。

オーケストラの後ろで時折奏でられるそれらの音の源を捜すのも、また興趣の尽きないことだろうと思う。

こうして無事、大曲を聴き終えたのだが・・・
これからの行動は、例年の経緯をご存知の方だったら、想像に難くない筈。


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