南回廊 2010年10月31日 文学 トラックバック:0コメント:4

ジッド
ILLUSTRATED BY NANTEI

アンドレ・ジイド著
「オスカー・ワイルド」
ジャンルを文学ということで書こうとしているのだが、
もうすでにハタと手が止まりそうである。

南亭が設定しているジャンルの管理者の中では、
最も文学からほど遠い人間だと思っているからだ。
まず圧倒的に読書量が少ないことと、その内容が貧しいからである。

書斎などもちろんあるわけがなく、ずらりと書架が並ぶ重厚な応接間もない。
一本の本箱に文庫本と雑誌、ビデオテープとプラモデルの箱などが雑然と詰め込まれているだけだ。
そんな南亭がこともあろうに、アンドレ・ジイドの著書を紹介しようとしているのである。
図々しいにもほどがある、と思われても仕方がないだろう。

アンドレ・ジイド。読んだことのない方はいないだろう。南亭をのぞいては。
オスカー・ワイルド。知らない人はいないだろう。南亭以外は。
ただアンドレ・ジイドが書いた「オスカー・ワイルド」を読んだ方は、
滅多にいらっしゃらないのではないか。
なぜなら相当昔に絶版になっているからである(わははは)。

この本はジイドとワイルドの交友録といっていいだろう。
だが後になって判ったことは、このふたりは一時ホモの関係にあったという。
交友録といってもジイドにとって都合の悪いことは当然省かれるわけだし、
そうなるとどこまでが本当なのか、首をかしげるところも多々ありそうだが。

その話はこんなところから始まる。
ある社交界のパーティで始めて出会った二人のシーンである。
紹介されたオスカー・ワイルドがいきなりこう切り出すのだ。

君はこんな話を知っているかね。
北欧のある村に雑貨屋を営む男がいてね。
食料や衣料などを仕入れるために、年に何度か遠い都会へ旅をするのだが。

長い旅を終えて村に帰ってくると村人たちが群がってきて、
雑貨屋の旅の話をせがむのが恒例だったのだね。
ある時の雑貨屋はこんな話をしたそうだ。

「XXXの森に入ると、牧神が笛を吹いていたのさ。
そしてもっと驚いたのが、XXの海辺では人魚が髪を梳いていたじゃねえか!」
雑貨屋はあることないこと巧みに語るので、村人たちは目を耀かせて聞き入ったそうだ。

それからまた何ヶ月かして雑貨屋は旅に出たのだが、
XXXの森に入ると、本当に牧神が笛を吹いて踊っていたし、
XXの海岸では夕日に照らされて、人魚が長い髪を梳いているのがはっきりと見えたそうだ。

また村に帰ってきた雑貨屋の周りには、話をせがむ村人が集まる。
今度はどんな面白いことがあったんだ?
すると雑貨屋はこう言ったそうだ「話すことはなにもなかった」。
わかるかね。

ワイルドはこれだけの話をして立ち去ったのであった。
アンドレ・ジイドの茫然とした表情が見えるような冒頭部分であり、
南亭を一瞬にして捉えた一頁でもあった。

以下、このようにワイルドに翻弄される話が続くのだが、
ジイドとワイルドの知識に乏しい南亭にして、
すっかりのめり込んでしまった百数十頁の不思議な物語だったのである。

ところで後で知ったことだがジイドと初対面のワイルドの言葉は、
あらゆる伝記や評論によると、
「僕は君の唇が気に入らないな。一度も嘘をついたことのない奴のように真直ぐじゃないか」
となっている。いかにも普通ではないワイルドの視線を感じさせる。

とするとジイドの「オスカー・ワイルド」の冒頭の言葉は、
やはりワイルドとのホモ関係を憶測させないように考えられた、
ジイドの創作ということになる。

オスカー・ワイルドは同性愛を禁じる当時の法律によって逮捕され、2年の懲役刑を受ける。
出所後に待っていたのは、誰からも敬遠される失意の日々であった。
1900年、梅毒による脳髄膜炎でパリで侘びしく死没する。

一方のジイドは1947年、ノーベル文学賞に輝き、
1951年82歳で名声に包まれた人生を終える。
この辺のことは皆さま周知のことであろう。

まことに惜しむらくはこの「稀書」を、引っ越しの最中に紛失してしまったことである。
しかも絶版になっていたことである。
興味を持った方のためにも、復刊を切に望みたい。

★イラストのどちらがジイドかワイルドか、お分かりの方には抽選により豪華な・・・
そんなわけがないです。すみません。


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