南回廊 2012年11月30日 音(他) トラックバック:0コメント:20

地の響
ILLUSTRATED BY NANTEI

芸能山城組
もし予備知識もないまま、このCDを聴いてみたとする。
きっといきなりから「何だこれは!」と驚くに違いない。
どこかの国の合唱団を、現地で録音したものだと信じるに違いない。

それほどこのコーラスは異色だったのである。
「芸能山城組」という団体も異色なら、
その声も今までの日本のコーラスの概念を覆したものであった。

日本の合唱はほとんどがベルカント奏法である。
ベルカントとは「美しい歌唱」という、イタリア・オペラにおける理想的な歌唱法なのだが、
「美しい」を追求するあまり、声の持つ原始の力を失ってきたように思う。

しかしこの「芸能山城組」はベルカントを否定することによって、
太古には祈りであり呪詛でもあった歌唱の根源に迫ったのである。

難しい理屈はこれまでにして、この「地の響」の話にしよう。
これは東ヨーロッパの民謡を集めたCDである。
男も女も地声で歌っているのだ。
まさしくベルカントの対極にあるといっていい。

当然ひとりひとりの声は荒削りに聞こえるが、
数十人の合唱には戦慄するような感動がある。。
見たこともないが、まさにブルガリア、グルジア、アルバニアといった、
東欧の大地から湧き上がる地の響きである。

この「芸能山城組」は1974年、
脳生理学者でありオーディオ研究者でもある山城祥二氏によって設立された。
メンバーは全てアマチュアである。もちろん日本人ばかりである。

「地の響」は合唱界は言うに及ばず、音楽界全体に大きな衝撃を与えた。
当時の芸大教授であった小泉文夫氏は、
「現代日本の音楽史は、山城組以前と以後に分けられる」とまで言い切っている。

「地の響」以降、「黄金鱗讃揚」「やまと幻唱」などの問題作を次々に発表し、
大友克洋の劇場用アニメ「AKIRA」の音楽で、山城組の名前は全国的になった。

現在の活動について書くのは長くなるので、
知りたい方は「山城組」のホームページをどうぞ。

今日はその山城組最初のアルバム「地の響き」の中の、
《陽は沈む》を聴いていただきましょうか。





※この文章は過去の記事を流用したものです。当時、まだYouTubeを挿入できなかったのですが、
やっと山城組の音楽を聴いて貰えると思い、再度記事にしたものです。




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