2017年03月13日 俳句 トラックバック:0コメント:24

最後の粋人。

出版社に送られた氏の原稿からはいつも、ほのかに良い香りが漂ってくるという。
編集者が氏に尋ねたところ「はてね?」と笑う。
お嬢さんが横合いから「父はずーっとシャネルを使っているんです」
氏は照れて「汗を掻きそうなとき、たまにです」

身の回りにあるのは全て趣味の良いものばかりだが、そのさりげなさが実に粋で、
また新地のクラブでも京都のお座敷でも《ふわり》という形容がぴったりなほど自然体だと誰もが言う。
そういえばご子息が大学入試に合格したお祝いに、新地の高級クラブに連れていったとか。

小学生のころから俳句をはじめ90歳を超えてもなお現役の俳人でありつづける氏は、
上方の艶麗さと洒脱さを併せ持つ”最後の粋人”である。
img086.jpg
ILLUSTRATED BY NANTEI
その人とは俳句結社「諷詠」の名誉主宰・後藤比奈夫氏。

後藤比奈夫の句は、対象の把握の仕方と言葉の斡旋が独特である。
独特といえばそのユーモアも、後藤氏ならではのものがある。
身の回りに存在する真実を掘り下げてゆくと、それはときに滑稽なものになるのかも知れない。
後藤氏の句は、そういうことも気付かされるから面白い。

和紙

その後藤比奈夫は、俳句についてこう述べている。

俳句は文学ではないと私は考えています。文学ではなくて、
美術、絵画、彫刻といった芸術に近いと思っています。
書いても読んでも文学というより空間芸術に近い。
俳句の時間は多くは止まっているもので決して流れていない。
そこに文学的要素を入れると流れてしまい、俳句として弱くなります。
俳句は絵を見るようにきちっと作らなければいけません。
そして俳句は心で作って心を消し去るものだと思います。


たしかに俳句は動画ではなく、スチールだ。
事物を切り取って五七五に定着させる表現方法は、写真と相通じるものがある。

また最近、こんな話をしている。

齢も九十を越えると、思いがけない体力の消耗に気づく。
体力ばかりでなく体の機能も同じである。
昨日まで分かっていたことが急に分からなくなったり、
今まで出来ていたことが急に出来なくなる。句作りにとっては致命傷。
それに負けない為に、私は心を大らかに平らかにして、くよくよしないことと決めてしまった。


昨年詠んだ句は、まことに大らかで平らかそのものではないか。

つくづくと寶はよき字宝船

後藤比奈夫は今年100歳になる。


恥ずかしながら、句集というものをしっかりと読ませていただいたのは、
この後藤比奈夫氏の「庭詰」と「沙羅紅葉」が最初で最後(もしかして)である。
しかも図書館から借りてのことであるから、俳句への志がいかに低いかお分かりであろう。


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テーマ:詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など - ジャンル:学問・文化・芸術

コメント

こんにちは。
南亭師匠が後藤比奈夫師に傾倒なさっていたとは驚きです。
しかし、よく考えたらさもありなんと思わされます。
特に洒脱さにおいてよく似ておられるところが、
師に惹かれる由縁かと勝手に得心しております^^

それにしても、今年100歳ですか?
なんと平らかで艶のあるお句ですね!

南亭師匠の描いた肖像画の生々しさはもちろん、
揚げていただいた十二句の選びも流石と思いました。
  1. 2017/03/13(月) 13:00:40 |
  2. URL |
  3. 昨日庵 #-
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  1. 2017/03/13(月) 13:08:39 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]
昨日庵さん。
こんにちは。

傾倒というほどではありませんが、惹かれること多しです。
洒脱は大いに好むところですが、後藤師には比べるべきもありません。
そのもっともの一つは、お金持ちではないのですねえ(><)

高級クラブや料亭で「ふわり」と居れるような、
そんな身分の洒脱になってみたいものです( ~~)

しかし100歳は凄いですね!
ナンテイはすでにポンコツの域です(笑
  1. 2017/03/13(月) 13:53:08 |
  2. URL |
  3. NANTEI #8g7ZE2Jk
  4. [ 編集 ]
今日は。
俳句をやってませんから、後藤比奈夫氏を知らないのは当たり前ですが、
確かに面白い俳句ですね。
「身の回りに存在する真実を掘り下げてゆくと、それはときに滑稽なものになる」
これは至言でしょう。
歴史の真実というのは一種の滑稽さを伴う、という司馬遼太郎の言葉と重なるようです。

それにしても「青みかん青の領域黄の領域」には、
俳句を超えた新鮮な言語世界を感じたものです。

  1. 2017/03/13(月) 14:21:22 |
  2. URL |
  3. ケンタロー #-
  4. [ 編集 ]
鍵コメさん。
始めまして!

そうですか、TUさんと一緒ですか。
それはそれは^^

いやはや、お恥ずかしいことだらけで(汗

なかなかに素晴らしい俳歴ではありませんか!
こちらこそよろしくご指導のほど、よろしくお願いします。

お訪ねいただき、ご丁寧なコメントまで頂戴して、
まことにありがとうございました。
  1. 2017/03/13(月) 15:53:05 |
  2. URL |
  3. NANTEI #8g7ZE2Jk
  4. [ 編集 ]
こんにちは!
後藤比奈夫氏は、存じ上げて居ますが
数々のエピソ-ドは、とんと知りませんでした<(_ _)>
素敵な男性ですね・

りまどは、句集も購入しませんし
図書館には、月に1度位街に出たついでに
寄るくらいです。
俳句界、結社誌、2誌読むのも余している
不勉強人です。

正直に・・
梟に・・等が好きな句です・
なぜか、くすっと笑えます・
りまどは、滑稽句が好きな性質です(^_-)-☆
  1. 2017/03/13(月) 15:57:04 |
  2. URL |
  3. りまど #-
  4. [ 編集 ]
こんにちは。
くすっと笑えてしまう俳句(^^)
後藤比奈夫さん、南亭さんと似てらっしゃるみたい♪
どちらさんからも、叱られそうですけど~(笑)

でも「俳句は心で作って心を消し去るもの」とは、
まるで禅の教えみたいですね。
それでもまだフクロウにはっきり横を向かれる・・・(笑!)
難しいものなんですね^^

あいかわらず素晴らしい似顔絵ですね!
後藤比奈夫さんをよく知らないのに、
そっくり。。。な気がします(^^;)



  1. 2017/03/13(月) 16:04:28 |
  2. URL |
  3. 小日向 #-
  4. [ 編集 ]
意図しないユーモアって上品なんですね。
(お上品な)関西の風土が生み出したものだと強く思います。
写真と俳句に相通ずるもの。そう感じます。
同じ場所に立っても見えるか見えないか見つけられるか見つけられないか。
比奈夫の句では「掛け大根の上を雲が流れてる・・」って覚えてないんかい!
それが好きです。
宝船の句。いいですね。私もどこかでこの句を知りつくづくそう思いました。
100歳にしてこの発見!NANTEIニイチャン長生きしてね。
  1. 2017/03/13(月) 17:11:59 |
  2. URL |
  3. おたま #-
  4. [ 編集 ]
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  1. 2017/03/13(月) 17:48:25 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]
シャネルの香りのする100歳^^ 華麗臭~てやつですね ♪
NANTEIおじちゃんも負けずに カレー臭纏ってくださいよ~~
因みに私も お風呂上りにはシャネルのパウダーを纏っておりますことよwww
  1. 2017/03/13(月) 18:21:07 |
  2. URL |
  3. maso♪ #Bzu7/SWU
  4. [ 編集 ]
後藤比奈夫氏、全く未知の方です。

NANTEIさんの肖像画で、そのお人柄がわかります。
私、こういった方が大好きです。

もし、知り合っていたら私も俳句の世界に誘われたと思います。
素敵な方だなぁ~~
この方をお好きなNANTEIさんも、きっと素敵な方でしょうね。
  1. 2017/03/13(月) 21:02:42 |
  2. URL |
  3. こすずめ #-
  4. [ 編集 ]
俳句
俳句は写真、って言い得てますね。
以前、短歌を作っていた時、思いましたが、
短歌はやはり動画ですね。
俳句は一瞬を切り取って絵を浮かべる、モノなんですね。

しみじみ味わいました、後藤氏の句。
短いほど難しいものですね。
  1. 2017/03/13(月) 21:20:18 |
  2. URL |
  3. ミルフィーユ #QgXOZ7z.
  4. [ 編集 ]
ケンタローさん。
私は後藤比奈夫しか知らないので・・・(笑

ずーっと以前から気になっていた俳人ではあります。
ユーモアは作り事ではなく、リアルな中にあるとも言えましょうか。
たしかに司馬遼太郎は、歴史の深刻さを掘り下げると、
滑稽に突き当たることが多いと語ってましたね。

真面目であればあるほどそうだとも^^
非常に判る気がします。

「青みかん」の他にも、まだまだ新しい感覚の句があります。
是非、一度句集を手にとってみてください。
  1. 2017/03/13(月) 23:23:28 |
  2. URL |
  3. NANTEI #8g7ZE2Jk
  4. [ 編集 ]
りまどさん。
こんばんは。

貧しくては粋になれないようです。
後藤師は経営者でもありますから、
粋な遊びもできるのでしょう。

りまどさんは勉強家であり、努力家ではありませんか。
でなければあんなに毎日のような投稿と、
毎日のような入選句をものにできませんからね。

ナンテイはもともと「お笑い」なので。
しかもレベルの低い・・・(^^;)
  1. 2017/03/13(月) 23:30:36 |
  2. URL |
  3. NANTEI #8g7ZE2Jk
  4. [ 編集 ]
小日向さん。
こんにちは。
怒るのはあちらさまに決まってます(><)

「心を消し去る」は無の境地なのでしょうかね。
いちばん難しいことです。

そういえば似顔絵を描くときは、
無の境地に近いような(笑
  1. 2017/03/14(火) 10:28:40 |
  2. URL |
  3. NANTEI #8g7ZE2Jk
  4. [ 編集 ]
おたまさん。
心を消したユーモアということですかね。
関西の風土が生んだかどうかわかりまへんが。
東北にも得もいえぬ笑いがあります。

そういえば同じ風景を撮っても、
人それぞれ全然違う写真になります。
あれ、カメラの所為やろか??

好奇心溢れる目、素直な目を持ち続けるということですな。
ナンテイの寿命は風任せですwww
  1. 2017/03/14(火) 10:40:21 |
  2. URL |
  3. NANTEI #8g7ZE2Jk
  4. [ 編集 ]
鍵コメさん。
恐れ入ります。

みなさんが知らない方を描くのが好きで・・・^^
似ていなくても、なんとかなりますしね(笑




  1. 2017/03/14(火) 10:45:40 |
  2. URL |
  3. NANTEI #8g7ZE2Jk
  4. [ 編集 ]
masoさん。
華麗臭ね~~^^

自分の匂いっちゅうのは、わからんからね(・・”

いろんな香水、いっぺんで振りかけたらどうやろか( 一一;)
  1. 2017/03/14(火) 10:54:40 |
  2. URL |
  3. NANTEI #8g7ZE2Jk
  4. [ 編集 ]
こすずめさん。
こんにちは。

おおらかな方なんでしょうね。
こういう方に教えてもらえたら、一生懸命になるのに・・・
と、私も思います^^

私のことは、よく判りません。
ただ自画像を描きたくないことだけは、確かです(笑
  1. 2017/03/14(火) 11:00:31 |
  2. URL |
  3. NANTEI #8g7ZE2Jk
  4. [ 編集 ]
ミルフィーユさん。
一瞬を切り取るという意味で、スチール写真と似ています。
ただ、動きのある俳句も無いとはいえません^^
後藤比奈夫さんのお父さんも有名な俳人、後藤夜半。
「滝の上に水現れて落ちにけり」という名句を残しています。
まるでスローモーションの大画面を見るようではありませんか!

こうなると俳句とは?なんて、もうわからなくなりますが(笑



  1. 2017/03/14(火) 11:15:32 |
  2. URL |
  3. NANTEI #8g7ZE2Jk
  4. [ 編集 ]
本当にNANTEIさんの記事は濃いですね。俳句あり、画あり、エッセイの文あり・・・。紹介して頂いた後藤氏の俳句そのものはもちろん、全体の流れに感動です。

こういう俳句がほんとうに感動しますね。素朴です。よく俳句の技法とかいいますが、それを身に付けたうえで、そういう、技術とか よりよく作ろうという事を考えずにサラサラと綴られている感じです。
こうやって歳をとりたいです。
  1. 2017/03/14(火) 11:32:48 |
  2. URL |
  3. てのりぱんだ #C/Rcg83E
  4. [ 編集 ]
憧れ。
初暦どきりと裸婦の現れし

これ、参りました(^0^)
  1. 2017/03/14(火) 11:58:06 |
  2. URL |
  3. 笠地蔵 #-
  4. [ 編集 ]
てのりぱんださん。
こんにちは。
お恥ずかしいですが、ありがとうございます。
なにかひとつ事に打ち込むべきだと思うのですが、
つい、あちこち手が伸びてしまいます(^^;)

後藤さんの俳句、そして考え方が非常に好きで、
なんとか近づけたらと思いつつ、だらだらとしています(笑

ほんと、こういう齢の取りかたに憧れます。
  1. 2017/03/14(火) 12:04:14 |
  2. URL |
  3. NANTEI #8g7ZE2Jk
  4. [ 編集 ]
笠地蔵さん。
その句、挙げていただき嬉しいです!

初めて見たとき、ぎゃふん!でした(笑

  1. 2017/03/14(火) 19:10:16 |
  2. URL |
  3. NANTEI #8g7ZE2Jk
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