ILLUSTRATED BY NANTEI
夜明けのスキャット
作詞:山上路夫 作曲:いずみたく 歌:由紀さおり
[新宿角筈、午前4時半]
車も人影も見当たらない大通りで女数人が殴り合い、あられもなく蹴り合う姿があった。
近づくにつれて断続的に野太い声が聞こえてきた。
このあたりでは「おかま」たちが縄張りをめぐって、時々乱闘するという。
[青山通り、午前5時]
ブルーコメッツの故井上忠夫が経営していた絨毯クラブ「ブルーシャトウ」から出てくると、
後ろから猛烈な勢いで駆けてくる気配がして、よく見るとフレアスカートに裸足の若い女だった。
私の横を駆け抜けていったかと思うまもなく、追いかける男も二人現れたのだった。
しかし裸足であるせいか女の足はましらのように速く、
その姿はあっという間に男たちを引き離して、朝靄の中に吸い込まれて行った。
[新宿駅東口、午前5時]
始発を待つ何人かが青黒い影を作っている。
その前を大きな日本人形を抱いた老人が、行ったり来たりしていていた。
[渋谷、午前5時半]
当時はジャズ喫茶で夜更かしする男が多かった。
渋谷の「スィング」もそんな一軒だったが、どういうわけかその夜は若い女性が二人、
店が終わるまでジャズを楽しんでいたようだ。
店がはねて外へ出た女たちに、後ろから声をかけた男二人。
「これから朝メシ食いにいかねえか」
振り向いた女二人は、しばらく男たちを品定めするように眺めたあと、
不意に見せつけるようなディープキスを始めたのである。
男たちが度肝を抜かれたように立ち尽くしていると、
女たちは笑いながら立ち去っていった。
[六本木、午前5時半]
交差点の角に秋山庄太郎が所有するビルがあって、その最上階にひっそりと割烹料理の店があった。
仕事が深夜に及んだある晩、やはり遅くまで居た上司でもある役員に誘われて、
六本木の中国料理店でご馳走になった後、その割烹に案内されたのだった。
女将はすこぶるつきの美人で、まして客は私たち二人だけだったから、
酒も肴も上司の話もそっちのけで私はその女将を盗み見していたものだ。
だが女将が店を仕舞う支度をし始めたとき上司は「俺はここでちょっと寝ていくから」
どきっとするような言葉を吐いたのである。
そしてタクシー台だと五千円札をひらひらさせるのであった。
なんだそういうことか。
秋庄ビルを出ると空は白み始めていた。
スポンサーサイト
テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術
また。おたまです。
東京の夜明けは大人過ぎてついていけん
山から上るお天道様に二拍手して乾布摩擦とラジオ体操するのが正しい夜明けじゃ!
安田あきこちゃんが突然大人になって夜明けのスキャット歌いだしたときは腰ぬかした。
東京の少女は豹変するんだね。
東京はおとろしいよ兄ちゃん。夜明けに大の大人が夜を引きずって・・そうなんだか?
- 2023/02/02(木) 12:22:00 |
- URL |
- おたま #w2YPfsyE
- [ 編集 ]
リアルですね。
これは実体験でしょうか。
ブルーコメッツのクラブとか、新宿のおかまたちとか、
生々しい話ばかり。
最後のはどういっていいのか・・・(笑)
- 2023/02/02(木) 16:20:44 |
- URL |
- OKADA'S #-
- [ 編集 ]
おもしろいおはなしを ありがとうございます
あたしの全然知らない縁のない世界のお話
聞かせていただいて ちょっと怖いながらも 興味深かったです
ありがとうございます。
- 2023/02/02(木) 19:09:03 |
- URL |
- いとこいさん #-
- [ 編集 ]
は~~!!
南亭さんは、どうしてかくも、変化自由なのでしょう?
粋ですネ~。
- 2023/02/02(木) 22:01:22 |
- URL |
- パープル #-
- [ 編集 ]
こんばんは!
夜明けのスキャット❣、懐かしいです❕由紀さおりさんもお若い!彼女は年を取られてからアメリカでブレイクしたみたいですね!
彼女の奇麗な澄んだ歌声、今も健在ですね!
- 2023/02/03(金) 19:00:21 |
- URL |
- みゅうぽっぽ #-
- [ 編集 ]