十七文字の風景(6) 2018年06月08日 俳句 トラックバック:0コメント:14

鮴(ごり)。

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金沢市内を犀川と浅野川という大きな川が流れている。
夏の気配が近づくと、この二つの川でごり漁が始まる。
昭和30年頃までは、金沢の風物詩として知られていた。

ごりは金沢ではカジカを言い、琵琶湖のあたりではヨシノボリをさす。
いずれもカジカ科ハゼ科であるが、形が似ているため同じ名が使われたものと思われる。

当時叔母の住んでいたところは、浅野川に近かったため夏休みに泊りがけで遊びにゆくと、
浅野川の畔を散歩のついでに、ごり漁を眺めたものだった。

ごり漁は二人一組で行う。
川石の影に隠れているごりを一人が追い出し、もう一人が竹で編んだ三角の笊で素早く掬うのである。
ごりは俊敏なので、その動きを知っていないと漁は成り立たないわけで、
相当の経験を積んだ者でないと、半日頑張っても二尾がせいぜいの難しい漁だった。

こうして獲った魚篭一杯のごりは、川べりの料亭に持ち込んだそうだ。
なにしろこの時期ごり料理を食べたさに、かの魯山人を初め食通を自認する人々が、
浅野川の料亭にやってきたというから、相当いい値段が付いたのだろう。

その、ごり。
一夜針という釣り方もあって、数10センチの釣り糸の先に餌を付けた針を、
川底の大きな石を重しにして沈めておくのである。
翌朝、その針の一本にでも、ごりがかかっていたら幸運というまなぬるい漁法だ。

ごりは「活造り」、「唐揚げ」、ささがき牛蒡との「ごり汁」などで供されることが多い。
白身の魚らしくさっぱりとした刺身もさることながら、唐揚げの香ばしさは絶品である。
他にも「甘露煮」は市民の食卓に欠かせないものであり、名産品のひとつに数えられている。

そのごりも、昭和の後半には生育環境の変化によって減少し、今では貴重な食材になっているという。

ゴリ
(写真は借用したものです)

ごりは、生命力の強い魚だと聞いたことがある。
そういえば同じ科目のハゼも釣ってから6時間経つのに、何尾かはクーラーボックスの中で生きていた。
ハゼのように鱗のない魚、鰻や穴子また鯰も生命力が強いとされ、滋養強壮の目的で食されることが多い。

ところでごり料理は、なにも料亭でなければというわけではない。
今はどうか知らないが、市民の台所といわれている近江市場の海鮮食堂でも食べることが出来た。
唐揚げは、ハゼ科特有の大きな胸鰭を広げた姿をしていた。
まるでそのまま飛んで行きそうな気がしたものである。


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江戸城本丸 2018年06月06日 歴史 トラックバック:0コメント:12

大奥。

大奥と聞くと、をのこは目を輝かすようで・・・
なにしろ厳選された美女が、何百人と姸を競っていたそうですから、
妄想たくましくなる筈でございます。

ところが、その大奥とは実際どんなところでしょう。
聞かれると、???となってしまいます。

そこで、前回の「将軍の一日」に続いて、ざっと大奥のことを学んでみましょう。

江戸城本丸御殿は大まかに「表」「中奥」「大奥」に分かれていました。
「表」は将軍への謁見その他の儀式のための広間や、役人たちが仕事をする座敷などがある、いわば役所エリアで、
「中奥」は将軍の住居であるとともに、将軍が書類に目を通したりする仕事の場、官邸でもありました。

そして「大奥」。将軍の私邸で、御台所(奥方)を中心に将軍の子供や奥女中たちが生活する一画です。
「中奥」とは塀で仕切られていて、「御鈴廊下」と呼ぶ長い廊下だけでつながっていました。
もちろん将軍以外は男子禁制の区画です。

大奥の女性は最盛期で3000人とも言われていますが、
その全部が全部、選りすぐりの美女だったわけではありません。
そして、ここにも厳然とした階級が存在していました。

次の図は、その大奥の構成ですが・・・
大奥
将軍のお手が付く美女は、上段の「御中﨟」と呼ばれるお女中で、
定員が8名といいますからなかなか狭き門だったようです。
稀にはその下の御次などが将軍の目にかなうこともあったと聞きますが。

その他、事務職の女中は別として下級の者は、体力で選ばれていました。
大奥の高級女中は根本的に深窓育ちですから、重いものを運ぶための要員でもありました。

ことに、奥方やお局は玄関に行くにも駕籠に乗るほどですから、
体ががっちりして力のある娘は、ほぼ間違いなく採用されました。
美女だからといって最優先でお城勤めができるわけではなかったのです。

こういった力役は町方の商家の娘がほとんどでしたが、
憧れの江戸城で勤めることが出来ても、駕籠かきや井戸汲みなどの明け暮れで、
優雅な暮らしからはほど遠いものでした。

それでもお役を離れて宿下がりすると、
「元御殿女中」として通るわけですから、方々から良縁が殺到したといいます。

一方で町方の娘でも、こういう結構な話があります。
京都の青物屋の娘「お玉」は、13歳の時に家光の側室となった「お万の方」と縁があり江戸に下ります。
初めはお万の方の部屋子となりましたが、あまりにも美しいので春日局の目にとまり家光のお側近く仕えました。

やがて家光の寵愛を受けて側室に加えられ、お玉の方と呼ばれるようになり、
その子「綱吉」が五代将軍となったため、「桂昌院」と敬われて絶大な権力を振るったのです。
江戸時代における女性の典型的な出世物語でしょう。

しかし、嫉妬渦巻く女人の館。
幸運だけではのし上がれません。
賢く、誰よりも強い意志の持ち主が頂点に立つことが出来たのです。

これ、男女問わずですかね・・・

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裏町食堂「南亭」 2018年06月04日 料(筍) トラックバック:0コメント:16

ハチクで二皿。

「ハチクと牛肉のすき焼き」
ハチクはタケノコと同じく、大鍋で茹でる。
そのハチクを適当に斬って炒め、牛肉・シイタケと戻した春雨を酒・水・砂糖で煮る。
牛肉に火が通ったら皿に盛り付け、茹でたスナップ豌豆を散らして出来上がり。

牛ハチク

ハチクの穂先はほろほろ崩れるほど柔らかく、肉の味もよく沁みてまことに美味。

「メンマと胡瓜の和え物」
ハチクの根元にちかいところ、つまり少々固い部分は薄く斬ってメンマにすることが多い。
出来上がったメンマと、塩もみ胡瓜を和えてみた。

牛ハチクB

胡瓜はスライスして塩を振り、10分後に軽く絞ったものをメンマで和えるだけ。
味が薄く感じたら、ラー油を少々垂らすとよい。
どちらかというと、紹興酒のつまみに最適かもしれない。

牛ハチクC

あとはブロッコリーの卵白かけ。
わざわざブログにアップするほどの料理でもなかったか・・・

しかし、ハチクの収穫も年々きつくなってきた。
まして今年は例年以上の気温である。
雑草の伸びも異様に速く、この谷津田の生態系も大きく変化しているようだ。

この先十年後は、どうなっているのだろう。


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里山から 2018年06月01日 里山 トラックバック:0コメント:20

初夏の恵み。

もう、お馴染みになったと思うが、農園の近くにある谷津田。
筍狩りに訪れたのは、ひと月前のことだった。

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その時は雑草も膝に届かないほどだったのが、

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ご覧の通り「カゼクサ」だろうか、イネ科の草が背丈を超すまで伸びていて、掻き分けなければ進めない。

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この草叢を抜けると、ハチクの林が見えてくる。
ハチクは破竹と書かれることが多く、「破竹の勢い」という比喩で知られているようだが、
これはタケノコ一般の生態を借りた言葉である。

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ハチクの本来は「淡竹」と書くのが正しい。
一般に膾炙しているタケノコは真竹、孟宗竹の若芽であり、
ハチクは直径が10センチ以下の竹に出来る細い竹の子である。
根元まで柔らかく、灰汁も少ないので一般的なタケノコより好みという人も少なくない。

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まだ時期が早いかと思いながら竹林に入ると、至るところ淡竹の子供が顔を出している。
淡竹は掘るというより切り取るといった表現が適している。

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荒っぽい話が、靴の先で蹴飛ばして折ることもある。
今回は正しく、包丁で根元から切って収穫する。

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あっという間に転がった十数本。

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谷津田の恵みはこれにとどまらない。
帰る途中に桑の大木が、いい姿で待っているのだ。

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鈴なりの実はすでにふっくらと熟れている。
相方さんは夢中で摘み始めた。私は大きめの実を口に含む。
鄙びた甘酸っぱさが口中に広がる。

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小袋一杯の桑の実は、グラニュー糖とともに煮詰めてジャムにするのだ。
桑の実ジャム、マルベリー・ジャムと呼ばれている。
ブルーベリー・ジャムより美味しいと思う。
なにより無料というのがありがたい。

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当面使うジャムは小瓶に詰め、残りはジプロップで冷凍しておく。
私の好みはヨーグルトに混ぜること。
ささやかだが、至福の時である。



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五月雑詠 2018年05月29日 俳写 トラックバック:0コメント:22

耕し。

爽やかな五月も間もなく終わろうとしています。
九州、四国は梅雨入りだそうで、おっつけ関東も鬱陶しい季節になるでしょう。
今月も過ぎ行く皐月の一コマを、写真俳句に仕立てました。

類型があるような、またひねりすぎたような。
あいかわらず、消化不良の詠みでございますが。

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