。。。。 2017年10月09日 雑話 トラックバック:0コメント:10

脂。

無類の脂好きである。牛・豚の脂には目が無いといってもいいだろう。
ステーキ用の牛肉は2センチ幅の脂で縁取られ、かつ何本もの刺しが通っている肉を選ぶ。
ソテー用の豚肉も台湾の北部が雪渓に見えるようなものしか買わない。
豚バラ肉は言うに及ばず!

肉はすべからく脂がいちばん美味しいと思っている。
だからステーキもポークソテーも、その最ものところは最後までとっておく。
美味しいものはいちばん後に味わうといった、貧乏性の習性である。

ところがいつの頃からか、その至高の部位が切り落とされるようになったのだ。
切り落とすのは無論連れ合いである。
焼き上がったステーキ、またはポークソテーの脂は皿の上で無慈悲に切り離され、
ただただ茶色になった肉をこちらに押しやるのである。

健康のためだとお題目のように繰り返す相手に、「脂身無くして何の肉ぞ!」と抵抗したものの、
能面のような顔で脂身を切り離されるばかりであった。
その脂身はどうなるかというと、別の小皿に外されてゴミ箱に捨てられるのである。

これほど悲しいことがあろうか!夢も希望も失われるとはこのことではないか!
・・・・・・・・・・
そんなある夜のことであった。

いつものように茶色いだけのステーキを噛み終えて、寝酒をちびちび飲んでいたところ、
家内は早めに寝室に消え、娘はさっさと自分の部屋に籠ってしまった。
つまみが欲しくなって台所を覗いてみたら、なんと流し台に切り落とされた脂身の小皿が乗っているではないか。
捨て忘れたに違いない。

咄嗟、空き巣泥棒のような目つきになった筈である。
全神経を尖らせて屋内の気配を窺いつつ、その悪魔のようにぬめぬめ輝く一切れを頬張った。
罪悪感と抗いつつ味わう脂身の、例えようもない極楽!

と、そのとき「お父さん!」という声が肩に突き刺さった。
いつの間にか中学一年の娘が、驚愕と蔑みと憐憫の入り混じった目で見つめていたのである。
薄明かりの下で捨てられる筈の脂を貪っている生き物が、父親だったという衝撃。

連れ合いに密告されたのはいうまでもない。

夫婦諍いのあらましは割愛する。
それからは、連れ合いが肉を吟味して買うことになり、
以来三十年あまり、私にとって味気ない肉の咀嚼が続いている。

なんてい3
ILLUSTRATED BY NANTEI



テーマ:エッセイ - ジャンル:小説・文学

昭和日和(其の十一) 2017年10月07日 漫歩 トラックバック:0コメント:12

お花茶屋。

名前に惹かれてやってきた。
江戸時代、八代将軍吉宗が鷹狩りに興じていたとき、腹痛を起こした。
その時、名をお花という茶屋の娘の看病により快気したとの言い伝えがある。

7-0921.jpg

この出来事により、現在の地名を賜ったとされている。

7-0921A.jpg

京成電鉄の「お花茶屋駅」で降りると、一直線の商店街が見えてくる。ありふれた商店街である。

7-0921B.jpg

商店街巡りも10回を越えると、見所のコツが掴めてきたようだ。
それと各商店街によって多少の特徴があることも分かってきた。
青物が多い商店街、惣菜屋が目立つ商店街などなど。

7-0921C.jpg

そしてどの商店街でも絶対に外せないのが、洋装品の店だろう。それも谷中銀座的な。

7-0921D.jpg
7-0921H.jpg

写真館、豆腐屋もスタンダードな存在だということが、だんだん分かってきた。

7-0921F.jpg

こういう風景には、とてもノスタルジーを感じる。

7-0921I.jpg

どうやら、お花茶屋商店街には、飲食店が多いようだ。
たぶん私立の大学が近いからだろう。
今は店名が定かではないが、スナックらしい店もあったようだ。

7-0921K.jpg

飲食店といっても、昔から地元で商売していたような店は少なく、
おおかたがチェーン店だったから、昼食には大いに迷ったが、無難な蕎麦屋で済ますことにした。

7-0921L.jpg
7-0921M.jpg

今風だが気持ちのいい店である。
ざる蕎麦セットを注文する。蕎麦の相棒は「親子丼」の鶏抜き。いわゆる卵丼だな、わははは。
・・・卵丼なんて食べるのは何十年ぶりだろう。

貧しい頃は(現在も決して裕福ではないが・・・)、この卵丼がご馳走だった。
なにせ『卵イノチ』の南亭である。
ゆで卵、目玉焼き・・・特に黄金色の卵丼。言葉にするだけで喉が激しく上下するのだ。

少量の蕎麦、半盛りの卵丼。
私にとって不味かろう筈がない。

お花茶屋、いいところだ!
----------------------------------------------------------------------------------------------
今回から独断と偏見で、商店街の評価を下してゆく。
昭和らしさがどれだけ残っているか、散策のお奨め度は?その二つの評価を★で表すことにした。
★五つが最高点である。

この[お花茶屋は]・・・
郷愁★★☆☆☆ 散策推奨★★☆☆☆ 

なお過去十回にも改めて評価を加えてみたので、興味がある方は遡っていただきたい。


テーマ:エッセイ - ジャンル:小説・文学

赤提灯(80) 2017年10月05日 酒肴 トラックバック:0コメント:26

ねぎまこんにゃく。

蒟蒻を砂糖で揉むと味がよく滲みると、某国営テレビで紹介してました。
こいつぁいいことを聞いた、とばかりにさっそく試してみたものです。
千切った蒟蒻とスプーン一杯の砂糖を、ビニール袋で揉むこと2分ほど。
その蒟蒻を水で洗ってから麺つゆと一緒に新しいジプロップに入れて、3時間ばかり冷蔵庫で寝かしました。

試しにそのうちの一つをフライパンで軽く焼いてみると、
なんと、しっかり中までいい味になっているではありませんか。
で、蒟蒻と葱を串に刺して焼き鳥風にしたわけです。

ネギマ

手羽先の先3本ほどと、醤油、砂糖、味醂、酒を軽く煮詰めたタレを塗って焼きますと、
殆ど焼き鳥の匂いです。たまらんです。
蒟蒻の歯ざわりまでが鶏肉に思えてきたばってん!

蒟蒻ついでに・・・「タラコシラタキ」
空炒りしたシラタキと、ほぐしたタラコを和えて紫蘇を振りかけたとです。

ネギマA

普通の味ですばってん・・・・

「ほうれん草入り卵焼き」も作りました。

ネギマB

卵が無いと生きていけんナンテイですばい。

ネギマC

そういえば、伊太利ではまだ「ZEN」がブームだそうです。
そうか・・・
ねぎまこんにゃくで稼げるのは、伊太利だ!

あ、ZENというのはZENのことですたい。


テーマ:雑記 - ジャンル:小説・文学

エロスとは 2017年10月03日 音(洋) トラックバック:0コメント:8

ズビグニュー・リプチンスキー
この名前をご存じの方は少ないと思う。

ズビグニュー・リプチンスキー(Zbigniew Rybczyński, 1949年生まれ )は、
ポーランド出身の映像作家で映画監督である。

1970年の初頭よりデジタル技術を駆使した映像作品を多く発表し、
ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、ミック・ジャガーなど著名なアーティストのミュージック・ビデオを手がけた。

高精細度テレビジョン放送(HDTV)技術を用いた映像作品を多数発表。
MTVの作品も多く手がけ、この分野でも多くの賞を受賞している。

1982年『タンゴ』で、第55回アカデミー短編アニメ賞を受賞。
1990年『オーケストラ』ではエミー賞特殊技術賞受賞。
アヌシー国際アニメーション映画祭ほか、数々の国際的な賞を受賞している。

(以上Wikipediaより)

そのズビグニュー・リプチンスキーの作品の中から、是非紹介したいのが『オーケストラ』である。
これは制作されて同年すぐにNHKスペシャルで放映された。
幸運なことにヴィデオに録画することが出来て、今も大切にしている。

『オーケストラ』は、戯曲作家が古典のテキストを舞台化するように、
有名な6つの曲を、リプチンスキーが映像化したものである。

モーツァルトの「ピアノ・コンチェルト21番」、ショパンの「葬送行進曲」、
アルピノーニの「アダージョ」、ロッシーニの「泥棒かささぎ」、
シューベルトの『アヴェ・マリア』、ラヴェルの『ボレロ』の6曲である。

リプチンスキーはこれらの曲に斬新な解釈を加えながら、
老い、怠惰、欲望、暴力、犯罪、歴史、政治、道徳、宗教といったモチーフを表現しようと試みている。

特にモーツァルトの「ピアノコンチェルト」では、
美しい庭園に集まった老いた男女のそこはかとない哀感が胸に迫り、
「アヴェ・マリア」の浮遊感には宗教的なエロティシズムすら感じさせる。
ともかく、30年近く経った今も斬新な映像だと思うのだが。

では、リプチンスキーの妖しい世界を、ごゆっくりと・・・




テーマ:雑記 - ジャンル:小説・文学

昭和日和(其の十の弐) 2017年10月01日 漫歩 トラックバック:0コメント:20

続・甘酒横丁。

甘酒横丁を後にして、通りの向かい側を歩いてみる。

7-0706A.jpg

昼は近辺のサラリーマンやOLで混み合う「玉ひで」が見えてくる。
「玉ひで」といえば親子丼があまりにも有名で、遠くからもわざわざ食べに来るほどの人気店である。

7-0706B.jpg7-0706C.jpg
7-0706D.jpg

7-0706E.jpg

路地には小粋な料亭が潜んでいたり、また別の通りには大正八年創業と書いた喫茶店などなど・・・。
この街は昭和どころか、大正・明治からの歴史を背負った店が少なくないようだ。

そういえば、ここは屋外博物館のように歴史的な建物が「陳列」されている。
中でも目立つのは看板建築という独特の外観を持つ建造物だろう。

看板建築とは木造の表面に銅版やタイルを貼った家屋である。
大正12年の関東大震災で焼失した商店街が復興する際、火災の延焼を防ぐため考案された。

7-0706F1.jpg7-0706F2.jpg
7-0706F3.jpg7-0706F4.jpg
7-0706G.jpg

人形町には至るところにこの看板建築が残っている。

7-0706J.jpg7-0706K.jpg

看板建築以外にも珍しい年代ものの家屋が多く、建物ウオッチャーには垂涎の街かもしれない。
こうした歴史的な建物が次から次と現れるものだから、ついあちらの路地、こちらの路地と歩いてしまう。
疲れること夥しい街である。ここらで区切りをつけて一休みしよう。

7-0706M.jpg

そういえばまだ昼を食べてない。先ほどの「玉ひで」にするか・・・
と、その並びに、明治45年創業という洋食屋が目に飛び込んできた。
西洋御料理「小春軒」、名前もいいし佇まいもいい!

7-0706N.jpg

とんかつ、メンチカツ、海老フライ、ハンバーグ、カツカレー・・・。
それら正しい洋食メニューの中から、オムレツを注文した。

7-0706O.jpg

ケチャップもデミグラもかけてない美しいオムレツ。
たっぷりの玉ねぎ、野菜、ミンチが詰まって、ふわふわと。そして実に優しいオムレツだった。
さすがは100年の間親しまれてきた洋食屋の味である。

7-0706R.jpg

「小春軒」の斜め向かい側が、谷崎潤一郎生誕の地という。
そのビルの上に、「幻の羊かん 細雪」の看板があった。
谷崎の作品にちなんだ商品名だろうけど、その下にも周りにも売っている店が見えない。

後で調べてみると、確かに「湖月」という菓子屋が羊羹を売っていたそうだが、
ご主人が亡くなって跡を継ぐ人も居ないことから、店を閉じてしまったらしい。
まさに「幻」となったわけだ。

こうして人形町の魅力を再確認したのだが、今度は夜を探訪したいものである。

郷愁★★★★★ 散策推奨★★★★★  


テーマ:雑記 - ジャンル:小説・文学